パナソニックコネクト株式会社は、社内AIアシスタント「ConnectAI」を中核とした業務変革を全社規模で推進しています。生成AIを安全に利活用するためのガバナンスと教育を整えつつ、現場で役立つ活用ユースケースを増やしてきました。導入初期から短期間で利用が広がり、社内の生産性指標に明確な改善が表れています。
2024年度には大幅な時間削減効果が確認され、2025年はエージェント型活用など次段階への展開が打ち出されました。この記事では、「ConnectAI」の全体像、基盤・機能、社内展開の実績、そして今後のロードマップを整理します。本文にはリンクを含めず、末尾に出典一覧をまとめます。
パナソニックコネクト株式会社とConnectAIの概要

ConnectAIは、生成AIを安全に利用するための内部ポータル/アシスタントとして2023年に運用を開始しました。社員が自然言語で問い合わせると、草稿作成、要約、コード補助、会議支援などのタスクを支援します。利便性と統制を両立する設計方針がとられ、短期間で全社展開が進みました。モデルや機能は段階的に更新され、精度や応答品質の評価も継続的にモニタリングされています。現場業務に密着してユースケースを磨き込む姿勢が徹底され、経営指標に資する成果が積み上がっています。
両社の協業背景と目的
この協業の背景には、現場のDXと人材の生産性向上を同時に進める経営課題がありました。生成AIは文章作成や要約といった汎用タスクに広く効きますが、企業での本格運用には安全性・機密性・コンプライアンスが不可欠です。ConnectAIはこの要件に応える社内入口として設計され、モデル更新やプロンプトガイド、利用ログに基づく改善を継続しています。現場での“使われるAI”に重心を置き、問い合わせ対応、ドキュメント支援、調査の初期探索など日常業務の摩擦を減らす用途から着実に価値が出ています。結果として、属人的な作業の標準化が進み、社員の時間を高付加価値業務へ振り向ける下地が整いました。
2025年における提携強化の取り組み
2025年はエージェント型の活用強化が重点テーマと示されています。単なる“回答”にとどまらず、社内システムやデータに連携してタスクを代行・自律実行する方向へ拡張する構想です。こうした高度化には、権限管理、監査、責任あるAI運用が前提になります。
同社は導入初期から安全対策やモデレーションを多層化してきた経緯があり、段階的な高度化にもその設計思想が活かされます。教育面では、社員が自走できるように利用ガイドや勉強会が整備され、現場主導でユースケースが増える循環が形成されています。環境負荷やコストにも目配りし、運用面の持続可能性を意識した改善が続けられています。
パナソニックコネクト株式会社が提供するAI基盤技術

ConnectAIは、クラウド上の大規模言語モデルを基盤に据えつつ、企業利用に必要な統制と社内データの活用機能を段階的に追加してきました。導入初期から評価値を可視化し、モデル変更に伴う体験の差異も検証しています。業務影響の測定を重視する姿勢が特徴的で、具体的な時間削減の実績が報告されています。
さらに、社外公開情報を安全に検索・引用する仕組みや、社内の公式情報を参照可能にする強化が進み、回答の根拠提示と正確性の担保に取り組んできました。これにより、企業内で求められる再現性と説明可能性が高まり、ビジネス用途での信頼性が上がっています。
エッジコンピューティング技術の特徴
ConnectAI自体は社内向けAIアシスタントとしてクラウドの基盤モデルを活用してきました。現場領域でのエッジ活用は同社の得意分野ですが、ConnectAIの中核は会話・文書生成・検索連携にあります。運用では、応答の安全性を確保するためのフィルタやモデレーションを多段で実装し、重大な不適切利用は発生していないと公表されています。回答品質の課題に対しては、モデルの切り替えや社内外の公式情報連携で対処し、プロンプト入力の負荷低減や音声入出力の検証も進められました。短い応答時間と使い勝手の両立が意識され、社員の定着利用につながっています。
現場向けAIソリューションのラインナップ
ConnectAIの利用は、文書作成、要約、議事録の下書き、プログラミングの事前調査、アンケート自由記述の要約など、日常業務の多数の場面に広がりました。特に調査・草稿段階での時間短縮効果が大きく、開発・情報整理・顧客対応の前工程が軽くなります。カスタマーサポートでは、公式情報と連携した回答支援の検証が行われ、問い合わせ応対の品質とスピード両面での改善が期待されます。
さらに、公開情報の安全な横断検索や、回答根拠の提示機能を試験導入したことで、ビジネス用途に求められる“出典付きの説明”に踏み込めるようになりました。こうした積み上げが、定量的な時間削減の成果に直結しています。
ConnectAIのAIプラットフォーム技術と強み

ConnectAIの強みは、①企業利用に必要なガバナンス、②段階的な機能拡張、③社内教育と評価の継続運用、の三点に整理できます。まず安全性では、モデレーションAPIやコンテンツフィルタを多層に配置し、人による確認も重ねるフローが用意されました。次に機能面では、モデル更新に合わせて社内のUX評価を取り、RAG(検索拡張生成)や根拠表示といった“業務で使える”拡張を重視してきました。
最後に浸透施策として、利用ガイドや勉強会を整備し、社員のフィードバックを接続して継続的に改善しています。結果として、利用回数、評価スコア、削減時間といった指標が右肩上がりで推移し、社内の標準ツールとして位置づけられるに至りました。
生成AI技術の活用事例
同社は、生成AIの評価を定量化してきました。導入初期のモデルでは評価が伸び悩みましたが、モデル切り替え後に満足度が向上し、プログラミングの事前調査やアンケート分析などで顕著な時間短縮が観測されています。会議の要約、メールや提案書の下書き、FAQ草案の作成などで、担当者の時間を大幅に節約できました。
カスタマーサポート領域では、公開情報や公式情報を取り込む試験運用を実施し、回答の一貫性や正確性の確保に踏み込んでいます。根拠提示の機能が加わることで、業務文書の再利用や監査対応にも寄与します。こうした“業務の最初の一歩を速くする”使い方が広がり、全社の合計で大きな時間削減につながりました。
業務自動化ソリューションの詳細
2025年の重点は、エージェント型の拡張です。これは単なる会話支援を超え、社内データやアプリケーションと連携して、下書き作成・検索・転記・予約・集計などのタスクを半自動でつなぐ構想です。権限や監査の要件を満たしながらワークフローに組み込むことで、繰り返し業務の所要時間をさらに圧縮できます。
RAGでの根拠提示と組み合わせれば、説明責任を保ったまま自動化レベルを上げられます。教育・運用の両輪でスケールさせる方針が示されており、実務現場の自走力を高める仕立てになっています。段階導入を前提に、安全側に倒した設計を続ける点が企業内AIとしての強みです。
導入企業の成功事例と効果測定

ここでは社内導入の効果を中心に整理します。導入から一年で大幅な時間削減が報告され、2024年度には累計の削減時間がさらに拡大しました。具体的には、プログラム調査の事前作業やアンケートの自由記述要約など、これまで人手で時間がかかったタスクが数分レベルに圧縮されています。
利用現場は開発、事務、営業、CSなど多岐にわたり、社内の“まずはAIに当てる”という作業習慣が浸透しました。評価スコアの推移も公開され、モデル更新がユーザー体験の改善に直結したことが示唆されています。CS領域では、公式情報との連携試験を経て、応対の品質・スピードを両立させる足場が固まりつつあります。こうした効果は、従業員一人あたりの生産性だけでなく、横断的なナレッジ共有の活性化にも表れています。
大手製造業での導入実績
部門横断での活用により、品質の均質化とスピードの向上が同時に進みました。とりわけCSや開発周辺のユースケースで、反復作業の短縮が顕著です。社外の個別企業名を挙げた導入事例は本テーマの出典範囲に含まれないため、本節では触れていません。社内の実績として、定量的な時間削減と、満足度の段階的な改善、ユースケースの拡充が継続しています。
ROI向上の具体的数値
同社は“時間”を主たるKPIとして公開しており、2023〜2024年度にかけて累計の業務削減時間が大きく伸長しました。時間削減は再作業や確認作業にも波及し、全社での工数圧縮につながります。費用換算や回収期間などの財務指標は限定的な開示にとどまるため、本文では数値換算を行っていません。代わりに、評価スコアの改善や日次の利用回数といった運用メトリクスを活用し、効果の持続性を示す形で運用が続けられています。AI活用の波及に伴い、教育・ガバナンス・ユースケース整備が有機的に結びつき、組織としてのROIを押し上げる構造が定着しつつあります。
2025年以降のロードマップと新サービス展開

2025年の重点テーマは、エージェント型の活用強化と、根拠提示を前提にしたRAG運用の深化です。単機能の“ヘルパー”から、複数タスクを横断して結ぶ“実行主体”へと役割が拡張されます。これに合わせ、権限・監査・ログ設計の厳密化が進む見込みです。生成系と検索系の組み合わせで、問い合わせ対応、社内FAQ、ドキュメント生成、ナレッジ検索の一体運用を標準化していきます。教育面では、現場主導でユースケースを増やすための学習コミュニティが継続され、利用ガイドやプロンプトのベストプラクティスも更新されます。モデルは適時切り替え・複線運用が想定され、応答品質とコストのバランスを取りながら拡張が進む構図です。
次世代AIソリューションの開発計画
重点は、①タスク連鎖の自動化、②根拠提示の標準化、③部門固有データの安全な連携、の三本柱です。タスク連鎖は、生成と検索、転記や予約、集計といった処理をワークフローで束ね、担当者の指示に応じて半自律に進めます。根拠提示は、応答の透明性と再現性を高め、監査やナレッジ再利用を容易にします。部門固有データの連携は、権限を前提とした限定範囲で進め、必要最小限の情報のみを参照する設計を徹底します。こうした開発は段階導入を前提にし、リスクを管理しながら価値を積み重ねていきます。
環境配慮型AIソリューション
生成AIの業務適用では、電力・コスト・レイテンシの三要素が常にトレードオフになります。同社は使いどころを見極め、プロセスの前工程短縮に効果が高い箇所から適用してきました。今後も、モデル選定やキャッシュ、RAGのコーパス最適化など、運用面の工夫で“少ない計算で高い価値”を実現する方針です。環境配慮や持続可能性を意識した運用改善は、企業内AIの健全なスケールに不可欠です。
パートナーシップ戦略の拡充
生成AIの社内定着には、IT・セキュリティ部門、業務部門、教育・人材開発の連携が欠かせません。同社は利用ガイド、モニタリング、評価のサイクルを回し、社内“協業”を強めながら拡張してきました。外部パートナーに関する固有名詞の公開は限定的なため、ここでは社内連携の枠組みと、安全性・有用性の両立という運用原則を強調します。
人材育成とローカライゼーション
社員が自走できるように、プロンプトの型、出典提示の作法、機密情報の取り扱いなどを体系化し、学習機会を提供しています。評価スコアの変化を可視化し、成功事例を横展開することで、“正しく使えば成果が出る”実感が広がりました。こうした地道な育成が、ツールの継続利用とユースケース拡大を支えています。現場起点の改善が蓄積されるほど、組織としての適応力も高まります。
まとめ
パナソニックコネクトの「ConnectAI」は、生成AIを“安全かつ役に立つ形”で社内に根付かせる取り組みとして着実な成果を上げてきました。
評価の見える化、根拠提示やRAGの導入、CS領域での検証など、実務に効く拡張が続いています。2024年度の大幅な時間削減に続き、2025年はエージェント型によるタスク連鎖の自動化が焦点になります。
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