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みずほFG、社内チャット「Wiz Chat」で業務40%短縮!GPT-4 Turbo with Vision統合の全貌と金融DXへの影響

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みずほFGが生成AIで業務改革を加速!「Wiz Chat」進化の概要

みずほFGが生成AIで業務改革を加速!「Wiz Chat」進化の概要

日本の金融業界をリードするみずほフィナンシャルグループ(みずほFG)が、生成AIを活用した業務改革で大きな一歩を踏み出しました。その中核を担うのが、社内向け生成AIチャット「Wiz Chat」の機能拡張です。みずほFGは、グループ内の銀行、信託、証券、リサーチ&テクノロジーズなどの主要5社に所属する約4万5000人の従業員を対象に、この「Wiz Chat」を提供しています。

これまでも、文章の要約や作成、翻訳、アイデア出しといった業務で活用され、生産性向上に貢献してきました。今回の最大の注目点は、従来のテキストベースの機能に加え、米OpenAI社の最新マルチモーダルAI「GPT-4 Turbo with Vision」を統合したことです。この進化により、「Wiz Chat」はテキスト情報だけでなく、画像やグラフ、手書きのメモといった視覚情報を認識し、対話形式で処理する能力を獲得しました。

この取り組みは、金融機関が抱える情報セキュリティのリスクを徹底的に管理するため、マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Microsoft Azure」上に構築されたセキュアな環境で実行されています。外部のインターネットから隔離された閉域網で運用することで、機密情報や顧客情報がAIの学習に利用されることを防ぎ、安全なAI活用を実現しています。

みずほFGのこの先進的な試みは、単なるツールの導入に留まりません。生成AIを全社的な業務基盤に組み込み、行員一人ひとりの創造性を引き出し、組織全体の競争力を高めるという、壮大なデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略の一環です。金融業界における働き方を根底から変える可能性を秘めた、重要なマイルストーンと言えるでしょう。

「GPT-4 Turbo with Vision」とは?技術的な仕組みを徹底解説

「GPT-4 Turbo with Vision」とは?技術的な仕組みを徹底解説

今回「Wiz Chat」に統合された「GPT-4 Turbo with Vision」は、生成AIの最前線を走るOpenAIが開発した、非常に高性能なAIモデルです。この技術は、大きく分けて「GPT-4 Turbo」の能力と、「Vision」機能の二つの側面から理解することができます。まず、「GPT-4 Turbo」は、従来のGPT-4モデルを大幅に進化させた大規模言語モデル(LLM)です。

その最大の特徴は、一度に処理できる情報量を示す「コンテキストウィンドウ」が128kトークン(日本語で約8万〜10万文字)にまで拡大された点です。これにより、長大な報告書や複雑な契約書といった文書全体を読み込ませ、その内容に基づいた要約や分析を一度に行うことが可能になりました。そして、今回のアップデートの核となるのが「Vision」機能です。

これは、AIがテキストだけでなく、画像データを「見て」理解する能力、すなわちマルチモーダル(複数の種類の情報を扱える)能力を指します。ユーザーがアップロードした画像やグラフ、手書きのメモ、さらにはシステムのスクリーンショットなどをAIが認識し、その内容について質問に答えたり、説明を生成したりできます。

この技術の仕組みは、画像内の物体や文字、構造をAIが解析し、それを言語モデルが理解できる形式のデータに変換することで成り立っています。例えば、金融レポートに掲載された株価チャートの画像を読み込ませ、「このグラフの傾向を説明して」と指示すれば、AIは上昇トレンドや下落のタイミングを読み取り、テキストで解説を生成します。

金融業務においては、手書きの申込書をデータ化する、市場分析レポートの図表からインサイトを抽出する、複雑な取引の関連図を解釈するなど、これまで人手に頼らざるを得なかった多くの作業を自動化できる可能性を秘めています。みずほFGでは、この強力な機能をAzure OpenAI Serviceを通じて利用することで、金融機関に求められる高度なセキュリティとプライバシー保護を両立させています。

導入による具体的な効果と行員・組織へのメリット

導入による具体的な効果と行員・組織へのメリット

「GPT-4 Turbo with Vision」を搭載した新しい「Wiz Chat」の導入は、既に行員と組織に目に見える成果をもたらしています。みずほFGの発表によれば、このAIツールを活用することで、資料作成や情報収集にかかる時間が、一部の業務で最大40%も短縮されたという驚くべき結果が出ています。

具体的には、これまで行員が時間をかけて行っていた様々なタスクが、AIとの対話によって劇的に効率化されました。例えば、海外の最新ニュースや調査レポートの内容を瞬時に日本語へ翻訳・要約する作業や、会議の議事録メモから清書された議事録案を作成する作業などが挙げられます。さらに、プログラミングにおいても、簡単なツールやマクロのソースコードをAIに生成させることで、開発工数を大幅に削減することに成功しています。

行員個人にとってのメリットは、単なる時間短縮に留まりません。定型的で時間のかかる作業から解放されることで、より付加価値の高い、創造的な業務に集中する時間と余裕が生まれます。顧客への提案内容を深く検討したり、新しいサービスのアイデアを練ったりと、人間にしかできない領域で能力を発揮する機会が増えるのです。

これは、従業員のエンゲージメントや働きがいの向上にも直結します。組織全体の視点で見ても、そのメリットは計り知れません。全社的な生産性の向上は、コスト競争力の強化に繋がります。

また、AIが生成する資料やコードの品質が一定レベルに保たれることで、業務品質の標準化が図れます。ベテラン行員の持つ暗黙知をAIとの対話を通じて形式知化し、組織全体で共有することも可能になるでしょう。このように、「Wiz Chat」は単なる効率化ツールではなく、行員の能力を拡張し、組織全体のパフォーマンスを底上げする強力なエンジンとして機能し始めています。

金融業界へのインパクトと生成AI活用の今後の展望

金融業界へのインパクトと生成AI活用の今後の展望

みずほFGによる大規模な生成AIの導入は、日本の金融業界全体に大きなインパクトを与えるものです。メガバンクが先進的な成功事例を示すことで、これまで導入に慎重だった他の金融機関、特に地方銀行や信用金庫なども、本格的なAI活用へと舵を切るきっかけになる可能性があります。今後は、生成AIをどれだけうまく業務に取り入れ、競争力に繋げられるかが、金融機関の優劣を分ける重要な要素となるでしょう。

しかし、金融業界で生成AIを活用するには、乗り越えるべき特有の課題も存在します。最も重要なのは、セキュリティとコンプライアンスの確保です。顧客の個人情報や企業の機密情報を扱う金融機関にとって、情報漏洩は絶対に避けなければなりません。

みずほFGがAzureの閉域網を選択したように、セキュアな環境構築が不可欠です。また、AIが事実に基づかない情報を生成する「ハルシネーション」というリスクにも備える必要があります。AIの回答を鵜呑みにせず、必ず人間がファクトチェックを行うプロセスを組み込むなど、厳格な運用ガイドラインの策定と遵守が求められます。

今後の展望として、生成AIの活用領域はさらに拡大していくと予想されます。現在は社内業務の効率化が中心ですが、将来的には顧客対応の最前線であるフロントオフィス業務への応用が進むでしょう。例えば、顧客一人ひとりの取引履歴やライフプランに合わせてパーソナライズされた金融商品を提案したり、高度な対話が可能なAIチャットボットが24時間365日、問い合わせに対応したりする未来が考えられます。

さらに、リスク管理部門では市場動向の高度な予測や不正取引の検知に、商品開発部門では新たな金融サービスのアイデア創出にと、その活用範囲は無限に広がります。金融DXは、AIという強力なパートナーを得て、業務効率化から新たな価値創造へと、次のステージに進もうとしています。

まとめ:みずほFGの挑戦が示す「生成AI×業務改革」の未来

まとめ:みずほFGの挑戦が示す「生成AI×業務改革」の未来

本記事では、みずほFGが社内AIチャット「Wiz Chat」に「GPT-4 Turbo with Vision」を統合し、全社的な業務改革を加速させている事例を詳述しました。この取り組みは、一部業務で最大40%の時間短縮という具体的な成果を生み出し、金融DXの新たな地平を切り拓いています。この挑戦の核心的な価値は、単に最新技術を導入したという点に留まりません。

約4万5000人という大規模な従業員を対象に、画像認識も可能なマルチモーダルAIを、金融機関として求められる最高水準のセキュリティ環境下で展開したという点にあります。これは、日本の大企業における生成AI活用のモデルケースと言えるでしょう。この改革は、行員一人ひとりから単純作業を奪うのではなく、むしろ創造性を発揮するための時間と機会を与えています。

AIを「仕事を奪う脅威」ではなく、「能力を拡張する優秀なアシスタント」と捉えることで、「人間とAIの協働」という新しい働き方のスタンダードを提示しているのです。みずほFGの事例は、金融業界はもちろん、あらゆる産業のビジネスパーソンにとって重要な示唆を与えてくれます。生成AIはもはや無視できない経営アジェンダであり、適切なガバナンスと戦略のもとで活用すれば、企業の競争力を飛躍的に高める強力な武器となります。

私たちは今、AIと共に働く未来の入り口に立っています。みずほFGの先駆的な取り組みは、その未来が決して遠いものではなく、既に着実に歩み始めていることを力強く示しています。この変化の波を捉え、自社のビジネスをどう変革していくか、全ての企業が問われる時代が到来したのです。

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金木武弘 / Takehiro Kaneko
著者

金木武弘 / Takehiro Kaneko

金木武弘(かねき たけひろ)は、東京を拠点とするAIコンサルタント兼パートナー。業界カンファレンスでの基調講演多数。直近では「生成AI×ビジネス変革のリアルケーススタディ」をテーマに登壇。 生成AIや大規模言語モデル(LLM)の事業実装を専門とし、「モデルよりも、まずビジョン」を信条にクライアントの変革を支援する。好きなOSSはLangChain、Haystack、Kubeflow。

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